クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です


「う……っ」


なんで、こんな事になったんだっけ。

婚約式の日は、お互いキラキラした瞳を向け合ったはずなのに。


――これからよろしくね、凪緒
――よ、よろしくお願いします……っ!


幸せを感じた、あの日に戻りたい。

また先輩に、笑いかけてもらいたい。

先輩が時山先輩に向けた顔で、私も見つめられたい。そして「好きだよ」って、言ってもらいたい。


……あぁ私、本当に諦めが悪い。


相手は、あんなにクズ男だって言うのに。
婚約者のいる家に、女性を呼ぶ人なのに。

この頭の中には、常に城ヶ崎先輩がいる。

ただの一目惚れなのに。
イケメンって理由だけなのに。

婚約式の日、真っ直ぐに私を見つめてくれたあの瞳を忘れることが出来ない。

先輩の一挙手一投足で胸の内側がぴょんと跳ねる自分を、知らないフリに出来ない。


「悔しいな、諦められないや……」


やっぱり私、まだ先輩が好き。

大好きだ――


「うぅ、城ケ崎先輩~っ」

「なに?」