しばらく走ると、長い渡り廊下にさしかかる。この先の棟にあるのは図書室と音楽室。
一応行ってみようか――と足を踏み入れた、その時だった。
「あら、城ケ崎くんじゃない。久しぶり」
時山先輩――俺を家に招き、薬を盛り、とんでもない企てを計画した張本人。
「ずいぶん慌てているわね、どうしたの?」
「……」
あれ以来この人とは会っていなかったが……。こうして再び目にして分かった。
もうこの人には、愛情も尊敬も憧れも。何の感情も湧かないことを。
「あれ? 今日は愛しの婚約者さんはいないの~? 二人って、婚約してるってわりには仲良くないわよねぇ」
時山先輩が近寄って来たかと思えば、俺の首にスルリと手を回す。
「ねぇ、やっぱり丸西さんじゃなくて私にしない? 色々とお得よ?」
「……そうですねぇ」
先輩の腰に片手を伸ばす。
すると途端に、先輩が艶っぽい目で俺を見つめた。



