「まさか〝時山家の悪事をリークする〟なんて。お父さんには脱帽ですよ」

「時山家の化けの皮をはがせるんだ、こんなに面白い事はないだろう?」

「そうですね。三日三晩、寝ずに仕事した甲斐がありましたよ。

〝各方面にリークするための資料作り〟を任された時は、どうなるかと思いましたが……。無事に終わって良かったです」



――事の発端は、三日前。

体育祭実行委員会中に教室を飛び出した凪緒が、お父さんと電話した日のことだ。


「丸西家の恥にならないよう精一杯がんばる」という必死すぎる凪緒の言葉に嫌な予感がしたお父さんは、すかさず行動に移した。


「以前から、時山家のきなくさい情報は流れていた。だから時山家に使用人を潜入させたりと、少しずつ情報収集していたんだ。

そうしたら、出るわ出るわ。どの報告書も、明るみに出たら一発アウトの代物だった」

「金にものを言わせた裏取引の数々、ですか。さすが、歴史が長い名家は奥が深い」


俺の皮肉を聞いて、お父さんが口元のシワを深くする。