*城ヶ崎 響希*



『響希さん、もしかしてお父さんと一緒に、』

「いま仕事中だから、また電話する」


ピッ


丸西家にいる時に、突然、凪緒から電話があった。

すぐ電話を切ったものの……。

さっきの声、凪緒は聞いただろうな。


「すまない、まさか電話中だったとは。相手は、もしかして凪緒か?」

「はい、ですが……大丈夫でしょう」


言い切る俺を、丸西社長……いや。お父さんは、困ったように笑った。


「あまり娘を過信しないでくれよ。昔から何をするか分からないところがあるからな」

「……今回は、そうじゃないことを願いますよ」


今度は、俺が困ったように笑う。

するとお父さんは「さて」と。

机に並ぶ、おびただしい数の封筒を使用人に運ばせた。

全ての封筒に、宛名は書いてあるが切手が貼られてない。お父さんは「郵便ではなく、直接配達しろ。手袋をするのを忘れるな」と指示していた。