私は、今でも覚えてる。

あの時の響希さんの苦しそうな顔を。
時山先輩への憧れを、失望へと変えた、響希さんの悲しそうな顔を。


「私は、時山先輩を許さない。そして笹岡――時山先輩の協力者でいる限り、あなたのことも許さない。敵視するし、軽蔑もする」

「……」


もう元通りのクラスメイトには戻れない。

私は、私の大事な人を傷つけた人を一生許さない。


「でも、今ならまだ間に合う。笹岡は時山先輩の協力者を辞める。それで終わり。

今後一切、私と響希さんに手を出さないと誓ってくれるなら、私は、」

「――……せーよ」

「え? ――んっ!!」


笹岡の手で、口を塞がれる。これ以上喋るな――という笹岡の声が、力強い手から伝わって来た。


「んん、んーっ!!」

「俺のことは名字で呼ぶくせに……なにが〝響希さん〟だ。その名前を、何度も何度も口にするな。

それに、言ったろ」


――血の関係って切っても切れないもんでさ
――逆らえないんだわ、アイツに


「俺が時山彩音の従妹である限り、お前たちに不幸を与えないといけない。

逃げられないんだよ。俺も、お前も――」