幸い、本棚の一番奥にいた私は、そのまま膝を折って隠れる。何列にも並ぶ本棚のおかげで、私の姿は完璧に隠れていた。
「――で、進捗はどうなの?」
「ん~……、まぁまぁってとこだな」
ん?
この声って……。
聞き覚えのある声が聞こえ、本の隙間から顔を覗かせる。
すると、図書室のドア近くに、二人の人物がいた。
一人は時山先輩。
そして、もう一人は――
「……え?」
見間違いであってほしいと、そう思った。
「早く丸西の娘をオトシてよ。婚約者の身である丸西が、一般人と付き合ってたなんて。いいネタでしょ?」
「すげー難しいことを簡単に言ってくれるよなぁ」
「簡単だから言ってるのよ。あなたの顔って、なんのためにあるの。こういう時くらいしか使い道がないんだから、甘い言葉の一つや二つでも言って、早く丸西を騙しなさいよ。わかってるわね――
笹岡」
「……」
私の目に写るのは、面倒くさそうに時山先輩を見る笹岡。



