何を話しても、さっきの甘い雰囲気と比べちゃう。あの幸せな時間に戻りたいって、欲が出ちゃう。
目の前の先輩は、もういつもの冷徹な顔に戻っているというのに。更にケンカまでしてるっていうのに。
なかなか私は、夢みたいな朝が忘れられない。
「私は……、優しい先輩が好きです」
「! ……優しくなくて悪かったね」
もうやだ。
私、なんで自分で傷口に塩を塗ってるんだろう。
こんな事したって先輩は私に優しくならないし、甘い雰囲気が戻ってくるわけじゃないのに。
「……」
「……」
長いながい沈黙。
最悪な空気にしてしまった。
どうしよう。どうしたらいいんだろう――
心の中で慌てふためいた、その時だった。
「……凪緒」
「え……は、はい」
突然、先輩が私を呼んだ。
予想外なことにビックリして、歩く足が止まる。そして私より数歩進んだ先で、同じように先輩も止まった。
「……これだけは答えて。
俺と時山先輩が電話してた時、その場に凪緒もいた?」



