「うぅ……。どうして幸せな時間は短いの〜」
手を合わせて「ごちそうさまでした」と泣く私に、トヨばあが同じく手を合わせる。そして目を伏せながら、
「でも今の辛い時間を乗り越えたら、幸せがたくさん待ってるじゃないですか。精進くだされ、お嬢様」
「トヨばあ……」
うん、そうだよね。いま私が学んでることって、城ヶ崎先輩や時山先輩は、とっくの昔に習った事だろうし。遅れを取った私が悪いんだ。
基礎を知らなくちゃ、会社の経営なんて出来るはずない。もちろん、先輩のサポートだって。
「先輩が困った時、少しでも力になれたらって……。そう思うの」
「まぁ、お嬢様」
口に手をあて、驚いたトヨばあ。かと思えば、メイド服から手鏡を出して私に向けた。
「恋をされてる顔ですな、ばあは嬉しいですよ」
「か、からかわないでよ、トヨばあぁ〜っ」
「ほほほ」
何枚も上手のトヨばあにおちょくられ、晩ご飯が終わる。
そしてお父さんが不在の代わりに別の講師が来て、私の勉強は深夜まで続くのだった。



