クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「うん。トヨばあ、ありがとう!」


ふぅー……。
椅子に座って、深呼吸。
シャーペンの芯を出して、いざ!


「待っててくださいね、先輩ッ」


先輩の隣にふさわしい私でいたい。
だって、私は先輩の婚約者だから。

誰のつけいる隙もないくらい、完璧な人間になってやるんだ!



と、意気込んだ日の夜。



「も、文字が頭の周りを回ってる~」

「お嬢様、しっかりなさいませ」


十六年間のツケというのは、本当に恐ろしいもので。

会社の〝か〟の字も知らなかった私は、時山家、城ケ崎家、丸西家の御三家(ごさんけ)の事をさらっと習っただけで、もう頭がパンクしそうになっていた。

二時間ミッチリ私に勉強を教えてくれたお父さんは「これから会社に行く」と。まるで朝のようにキビキビした動きで、資料室を後にした。


「夜の9時から会社に行くって……。お父さんって、実はサイボーグじゃないの?」