「俺は、やっと夢から覚めたんです」
「夢?」
「時山先輩に抱いていたのは恋じゃなく憧れだった、って。
同じ金持ち同士、社長の子供同士……悲しい事も辛いことも、同じようにあったはず。
だけど先輩はいつも笑っていて……スゴイと思った。そしてそれを、恋だと勘違いしたんです」
「勘違いって、どうして断言できるの?」
「……簡単ですよ」
すると先輩は私のそばに寄り、ギュッと抱きしめた。熱すぎる体温を、これでもかと私に押し付ける。
そして――
「凪緒は使用人も秘書も使わず、俺の風邪を治そうとした。俺のためにと、一人で一生懸命頑張ってくれたんです。
だけど……時山先輩はどうですか?」
「っ!」
――看病もバッチリ任せて? 仕様人に手厚くさせるわ
――一番上にい続けるためには、どんな事だってする
「あなたのした事は、俺のためじゃないでしょう?
所詮、金持ちは皆クズ。やることが最低な者同士、先輩も俺も同じ穴のムジナってわけです。
だけど凪緒は違う。心から俺の事を考えてくれる、想ってくれる。そんな婚約者に〝応えたい〟と思うのは当然でしょう?
俺は恋をするなら、先輩じゃなく凪緒がいいんです」



