クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「響希様を取り戻したいんでしょ? なら、前進あるのみです」


安井さんはニコニコしながら、その糸目をチラッと開ける。瞳の奥から「頼みますよ」と言われた気がした。


「……よしっ」


そうだ、さっき安井さんは「急を要する」って言ってた。先輩が危ない目に合ってるかもしれない。

だったら迷ってる暇はない、早く行かなきゃ!


「いって、きます……!」


はぁ、ふぅ。
深呼吸して、インターホンを鳴らす。


ピンポン


『はい、どちら様ですか?』

「私は……城ケ崎響希の婚約者、丸西凪緒です。中にいる響希さんと彩音さんとお話するために参りました」

『……少々お待ちください』


私を招かんと、長い門が時間をかけて口を開いていく。すると目の前に広がる建物に、ジットリした冷や汗が出てきた。

大きな建物に圧倒される。

「帰れ」と言われてるみたいで、恐怖すらある。いや実際、私は怖いんだ。中で二人が何をしてるか、この目で見るのがこわい。


「……でもっ、先輩は私を呼んでくれた」


電話をしてくれた。
私を必要としてくれた。

だから、行くんだ。
先輩を返してもらいに――!