クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です


ガラガラ――と。王子様バージョンの先輩が、音を立てて崩れていく。

やっぱりお金持ちなんて、ろくなもんじゃない。こんな最低クズ男と結婚させられるんだから。


「ケモノを見る目で、俺を見ないでくれるかな。欲求に素直と言って欲しいね」

「……もう、いいです」

「お、やっと理解してくれた? 話が早くて助かるよ。

じゃ、これからも女の子が出入りするけど、アンタは気にしないでいいから。ただ黙って、見なかったフリしてて」

「――」


ニッコリ笑った笑顔が、学校で見る王子様の笑顔そのまま。

だけど今その笑顔を見せられるのが、どうしようもなく腹が立つ。

学校のみんなを騙して、婚約者を裏切って……どうして普通でいられるの?


パチン


「……痛いんだけど」

「へ?」


あれ? 今、何が起こった?

私の右腕が上がってる。先輩の左頬が、ちょっと赤くなってる。

まさか、私……叩いたの⁉