クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「さっきの、女の人でしたよね」

「……だったらなに」


質問をした途端、城ケ崎先輩の顔に影が落ちた。

それは学校で見る先輩とは百八十度も雰囲気が違っていて……怖くて、思わず身震いしてしまう。


「先輩は、私の婚約者……ですよね?」

「……」

「なんで、女性なんか……っ」

「……はぁ~」


長いため息が、先輩から零れた。
かと思えば、いきなり私の腕を掴んで、


バタン


私を中に入れ、玄関の扉を閉める。

さっきまでのお気楽な私だったら「わー、中も広い~」なんて興味津々で部屋を見ていただろうけど。今は、私を掴む城ケ崎先輩の手から目が離せない。


「言っておくけどさ」


ギリッ、と。私の腕を握る手に、力を込める。先輩の爪が少し食い込み、思わず顔が歪んだ。


「アンタとは形だけの仲だから。俺は、これまで通りの生活を続けるよ」

「〝これまで通り〟って?」