もう遅いよ...

「あのね、佐和くん、私ね!」



さっきの居候の話をしようとするのに上手く話がまとまらない。

ぐずぐずと鼻水と涙を拭う私。

佐和くんはなんにも言わずに頭を撫でてくれる。



「俺さ、しぃちゃんが、坂村のとこに居候するって聞いて、すっげー不安になった!」

「うん…」

「でも!さっきのしぃちゃんの話し聞いてさ、やっぱ大丈夫かな、って!しぃちゃんは、俺から離れないでね…」



私に言うというよりは、呟くように言う佐和くん。

そんな佐和くんが儚くて、ふわふわとした髪をゆっくり撫でた。



「佐和くん」

「ん?」

「また明日!」



帰り際そう言うととびっきりの笑顔で



「うん!」



と返してくれた。

きっと幸せってこんな感じなんだろうな、なんて、幼い私は考えていた。