「あ、お疲れさー……ま!?」


 わたしは思わず声を大きくした。

 船橋くんの左ひじから血が出ているのを発見したからだ。


「わっ、わっ、めっちゃ血出てるよ!?」

「あ、うん。 止まんなくなっちゃって」


 真顔で言う船橋くんは曲げた肘から垂れようとする血を右手のひらで押さえていて、抑えきれなかった真紅の血が右手を伝って滴っている。


「えっ、わっ、どうしよう、えっと、救急車!?」

「いや、救急箱で」

「きゅっ、きゅうきゅうばこ!きゅうきゅうばこ!?」

 
 大慌てでキョロキョロする私と反対に、やけに冷静な船橋くんはベンチに座って「そこです」と棚の上の方を指さした。

 言われた場所に救急箱を見つけて船橋くんの隣に置いてあけたものの、誰かの傷の手当てなんてしたことがなくて、手が止まる。

 絆創膏貼っておさまるレベルじゃなさそう。 包帯……はきっと染みちゃうから、えっと、なにからしたらいいんだ……!?