隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

「どーぞっ」


 まりか先輩が明るい笑顔で選手に手渡すと、それまで殺伐としていた選手たちもみんな顔をほころばせる。


「はー、やっぱまりかは癒されるわぁ」

「マネージャーはこうでないと!」

「えー?やだなぁ、ほめ過ぎだよー!」


 生き返ったように練習へ戻っていく選手たちをまりか先輩が可愛い笑顔で「頑張って~」と見送る。
 その様を呆然と眺める、文字通りボロ雑巾のようなわたし。


 これが……マネージャー……


 サッカー部彼氏へと続く扉が、ドシンドシンと重たい音を立てて次々に閉じられていく。

 もう体のあちこち痛いし、足が棒のようになってうまく動かせない。 心も体もズタボロだ。 なんだか頑張れば頑張るほど意味がない気がしてきた。

 わたし、お呼びでない?


「船橋ぃーーー!!」


 グラウンドに響き渡る大きな怒声に、思わずビクッと肩が跳ねた。


「なにしてんだお前!!もっと走れんだろこらぁ!!」

「はい!!すいません!!」


 見ると、フィールドで試合形式の練習をしていたレギュラー陣に混ざる、ただひとり一年生の船橋くんがいた。

 汗だくで泥まみれになって走る船橋くんに、熱くなったコーチの檄はどんどん強くなる。


「なんだよ今のプレーは! 練習だからって舐めてんのか! ああ!?」

「さーせん!!」

「やる気ねぇなら帰れ!!」

「っ、さーせん!!」