隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

 あぐあぐするわたしにスコアとタイムの記録ノートを半ば押し付けるように手渡すと、二人はそそくさと歩き去ってしまった。
 
 かたまって動けないわたしに春の生温い風が吹きすさぶ。

 そして今日三人でやることリストの量を思い返して頭がショートする。

 無理だ、一人じゃ。 とてもじゃないけどこなせない。
 そうだ、まりか先輩!まりか先輩は何処!?

 しばらく帰ってこないまりか先輩を探してキョロキョロすると、見知った顔を見つける。


「三田先生!」

「お。越谷」


 ジャージを着た三田先生が、相変わらず気だるそうな空気を纏ってベンチに歩いてくる。


「えっ、なんで三田先生!?」

「顧問の長島先生の奥さんが産気づいたらしくてなー。副顧問の俺がピンチヒッターで来た。越谷は今日から仮入部か」

「そうです!」


 よかった! 担任の三田先生がいてくれたら話しやすい!
 助けてくださいと言おうとすると、


「じゃあこれ、よろしく」

「ほ?」


 三田先生がズシッとわたしの手にビデオカメラを渡した。