隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

「普通だね」


 美紗ちゃんに耳打ちされて、確かに、と思う。

 足長いから速そうなのに。 てか殺し屋なのに。


 それから美紗ちゃんと立ち幅跳びの測定を終えて次の反復横跳びの列に並んでいるとき、酒々井優成のハンドボール投げを見た。

 きれいなフォームで思い切り振りかぶって投げられたボールは、


「あ、やべ」


 ボスッとすぐ近くの地面に叩きつけられた。


「……やり直していい?」


 首を横に振る体育委員に両手を合わせてお願いする酒々井優成。

 傍で見ていた男子たちが笑っている。


「あんな人でも人殺せるの?」


 美紗ちゃんに聞かれて、私は首を傾げる。

 確かに、殺し屋にしてはなんだか身のこなしが重いし、どんくさい。

 身体能力の問題じゃないのかな……?


 そのとき、しゃがむ私たちの後ろを通りがかったクラスの男子二人組の声が聞こえてきた。


「酒々井ってとっつきにくそうに見えて意外にいいやつだよな」

「あ、俺も思った。イケメンだけど鼻にかけてないっつーか」

「そうそう、全体的にゆるくて誰に対しても態度変わんないよな。いつも平和な感じ」


 ……平和な感じ?


「だってさ」


 美紗ちゃんが私を見た。


「……」