「……」


 倉敷さんはしばらく沈黙したかと思うと、ゆっくりとわたしの背中に手をまわし、グスッと洟を啜った。


「……ご無事で……なにより……!」


 やっぱりマートンだって嬉しくなって、ギュウ、と抱きしめる力を強くする。



 そのとき、後ろで座り込んでいた優成がドサッと倒れた。


「! 優成!?」


 すかさず駆け寄り、優成に声をかける。


「……、」


 意識が朦朧としてるみたいで、優成の目は焦点が合わない。

 倉敷さんが優成のマスクを外させると、大量の冷や汗に、青ざめた顔が露わになった。


「優成……!」

 
 倉敷さんが無線を口元に当てる。


「救急隊へ、こちら体育館倉敷。 拳銃で右肩と左わき腹を撃たれた職員が一名、出血多量で……」


 どんどん血を流れさせて息が細くなっていく優成に怖くなって、手を握って名前を呼ぶ。


「優成! 優成!!」


 ピク、と反応して手を弱い力で握り返した優成が、口からか細い声をこぼした。


「…………あったか」

「え……?」


 優成はふ、と口角をあげて、目を閉じてしまった。


「優成……!!」
 


 そして優成は、動かなくなった。