「ははっ、」


 こんなやつらにやられるなんて。

 壊れたように笑って泣く俺を、マートンは絶望した顔で見る。


「ヨルゴ……どうして……っ」

「……ごめん。 やっちゃった」


 笑いも涙も、止まらない。

 普段の俺だったら、あんな雑魚どもに殺られることはなかった。

 浮かれてたんだ。

 初めてエミリアと目を合わせて、恋に落ちて、ありもしない未来を想像して。

 俺が彼女を好きにならなければきっと、救えていた。

 俺じゃなかったら救えた命だった。
 

 血の匂いが充満する部屋の中で、月明かりに照らされるエミリアの真っ白な顔を眺めながら俺は、自分のこめかみに銃を突きつけた。

 それはほとんど無意識だった。


「! ヨルゴ! なにをしているんです……!?」


 もし来世なんてものがあるのなら、俺は誰も愛さない。

 愛するあなたを殺してしまう愛なんて、いらない。



「ヨルゴ!!」



 マートンの断末魔のような叫びを聞きながら、俺はその引き金を引いた。