隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

 夜を通して馬車に揺られて、朝。
 死に損ないの俺が連れてこられたのはなんと、この国の国王様のお屋敷だった。


「嘘だろ……」


 でっかい真っ白なお城を前に俺は呆然とした。
 所狭しと咲き誇る花畑、貴族だけでなく召使いも皆きれいな格好をしていて、その辺を歩く鳩ですらお上品に見えた。


「あなたのお仕事は、あのお方を陰ながらお守りすることです」


 そう言ってマートンが示したのは、何の苦労も知らなそうなお嬢様だった。


「あの方は第二王女のエミリア・ド・ステヴナン様。 歳はあなたより三つほど下でしょうか。 国王様の大事なご息女であられます」


 エミリア様は、美しい花畑を舞う蝶々を眺めて顔をほころばせている。


「……ハッ」


 笑わせてくれる。 俺にあの皇女様を守れって? 俺や兄貴が死に物狂いで生きてた最中もここでのんびり平和に、幸せに暮らしてきたんだろうあの能天気なお嬢様のために働くってか?

 ……悪くない。 冥土の土産にあの平和なお嬢様騙してこの世がいかに不条理で成り立ってるか教えてやろうかな。