「「…………」」
ザワザワと明るい喧騒に包まれる朝の教室。
視線を交える私と〝彼〟だけはピタリと時間が止まったように動けないでいる。
二〇二四年、春。
私立城華学園高等学校、入学式当日。
桜の花びらが舞い散る明るい朝、誰もが期待や希望と不安を抱え、この特別な日を思い思いに過ごしている。
そんな中ウキウキ、ソワソワ、意気揚々と一年三組の教室にやって来た能天気な私・越谷ひまり、十五歳。
ずっと楽しみにしていたピンクチェックのセーラー服を着て朝から上機嫌、友達ができたらあげようとイチゴのキャンディーをポッケに忍ばせ、スキップでここまでやってきた。
先に隣の席に座っていた柔らかそうな黒髪をした男の子に挨拶をしようと、笑顔で顔をのぞきこませたその瞬間。
目が合った彼の、その琥珀色の瞳がおさまる三白眼を見て、突然、前世の記憶を取り戻してしまったらしかった。



