隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

 外野が「あ~」「優成終わった~」と笑う。

 酒々井が剣を縦に振ったのだ。これで俺も空振りすれば再試合、面を取れれば勝ち。 圧倒的有利になった。

 息を吞んで、音がした方へと近付く。 刹那、酒々井の気配がした。

 ここで決めてやる……!

 俺は剣を振り上げた。

 その瞬間、


「残念。 殺気が駄々洩れだよ」


 背中側から、耳元で囁かれた。

 
「!!」


 悲鳴を飲み込んだ俺はすぐさま振り返って、膨れ上がった恐怖心を勢いに込めて剣を振り下ろした。

 ポコッと間の抜けた音に「いて」とバカみたいな酒々井の声がした。


「船橋くんの勝利~~~!!」


 審判の声が響き渡った。