隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

 ブワッと冷や汗が吹き出す。 息をすることすら怖い。

 ……殺気だ。
 
 それも、得体の知れない大きな何かが俺を手のひらの上で転がして弄びながら、捕食する機会を伺ってるかのような。

 圧倒的強者の殺気。

 そうだ、あの時と同じだ。


――うっかり誰かに殺されちゃうかもよ


 ゾクゾクと背筋に悪寒が走った。

 ……違う、あのときなんかよりずっと恐ろしい。

 恐怖で膝から崩れ落ちそうになる。

 なんで俺、こんな震えてるんだ。
 なんでこんな手足が冷えていくんだ。
 相手は自分と同じただの高校生なのに。
 ただ、おもちゃの剣を振って叩き合おうとしてるだけなのに。


「どうしたー? 頑張れ船橋くーん!」


 ガヤの能天気な声のおかげで、我に帰る。
 
 ……落ち着け、落ち着け。

 そう自分に言い聞かせて、静かに息を整える。

 そうだ、越谷が見てる。

 俺は自分を奮い立たせて、剣をグッと握りしめた。

 
 そのとき、ブォンッと勢いよく風を切る音が少し離れたところで聞こえた。