隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

 準備が終わり、審判役の男子に立ち位置に連れていかれて、剣道の試合のようにしゃがんで構える。


「なになに?」「なんの対決?」「やば、イケメンとイケメンが戦うの!?」

 
 外野が増えたのか、周りが少し騒がしくなる。

 現段階で酒々井が対面にいるということはなんとなくわかる。


「それじゃ行くぞー! よーい……スタート!!」


 合図とともに立ち上がって、ひとまず横へ移動する。

 音を鳴らさないように細心の注意を払う。

 ……酒々井の足音が聞こえる。


「いいぞー船橋くーん」

「優成! 足音うるさい! もっと忍ばせてー!」


 酒々井の足音がした方へ剣を向けながら、なるべく回り込むようにしてすり寄る。

 衣擦れの音や息遣い、そこに流れる空気感でわかる。 酒々井がそこにいる。

 勝てる……!

 そう思ってゆっくりと剣を上にあげた瞬間、

 突然酒々井の気配が消えた。


「……!」
 

 同時に、言いようのない恐怖が俺を襲い始めた。