「っあー、ガチで殺したい」


 そうぼやいたのは俺じゃない。

 コンビニの前でたむろする三人組の男子高校生の一人だ。 全員、城華学園の制服を着ている。

 真ん中にいるのは……サッカー部部長の白井。 一緒にいるのは同じ三年のようだ。


 「ほんと騙された、最悪。 ぜってぇ痛い目見せてやる、あの女!」

「てかあの一年マネ、耳ぶつけたんだろ? 大丈夫かよ」

「言いふらされたらやばくねぇ?」

「大丈夫だろ、あいつどんだけ嫌味言っても言い返してこないでヘラヘラしてんじゃん」

「脳みそ溶けてんじゃね」

「あっはは!ひっど」


 俺は先輩たちの前で足を止め、じっと見下ろす。


「……あ?」

「なんだよお前。 何年?」


 こんなやつが部長なんて。
 城華学園サッカー部は、相当落ちぶれたらしい。
 

 ――線引きは大事だよ ね


 わかってますよ、宗像先生。
 

 俺はニッコリと渾身の笑顔を先輩方に手向ける。


「痛いのと苦しいのだったら、どっちがいいですか?」


 ちゃんと、殺さないように気をつけますから。