隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

 ……これを恋と呼ばずに、なんと呼ぼう。

 私は、恋に落ちた。

 歳も名前も知らないこの人に、恋をしてしまった。


 ……そう確信した、そのときだった。

 美しい笑顔の彼がおもむろに右手をあげて私の額にカチャ、となにか硬く冷たいものをあてがった。


「……?」


 それから三秒間のことだった。

 私は何が起こったのか分からず思考停止して、ただ彼がスゥ、と息を吸うのを見て。

 『銃口を突きつけられている』と気が付いたときには、パァン、と破裂音が夜空に響き渡っていて。

 直後、バツンッ。
 
 私のすべてが暗転した。



 ……エミリア・ド・ステヴナン、十五歳。

 恋を自覚して三秒後。

 恋した相手に、あっけなく殺されたのだった。


 完。