隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

 
 帰りはいつも最後、朔耶と電車で二人になる。

 朔耶は口数が多くない方だからよく沈黙の時間になるんだけど、不思議とその沈黙は気にならないし、朔耶も気にしてなさそうだった。 それだけ気心知れた仲になれたってことだろうか。

 駅に着いて、高校生カップルが乗り込んできた。 二人は仲良く手を繋いで近くの座席に腰かける。 二人のスクールバッグにはお揃いのキーホルダーが付いている。

 ……今頃優成とまりか先輩は、カップルになって手を繋いだりしてるのかな。

 これから毎日、まりか先輩の彼氏になった優成と隣の席で、優成の彼女になったまりか先輩と部活で会って、のろけ話を聞かされたり、二人が仲良くするところを見たりしなきゃいけないのだろうか。

 ……マネージャー、辞めたくなってきちゃったな。


「……越谷」


 隣で今にも寝そうにコックリしていた朔耶が、息に近い声でわたしを呼んだ。

 ん?と返事をした瞬間、朔耶はコテンとわたしの肩に頭をもたれさせた。

 
「!」


 いつも女子とは一定の距離を保つシャイな朔耶の大胆な行動に、ビックリしてかたまる。

 朔耶はぼそり、呟いた。


「辞めないよな」

「え?」

「……」

「朔耶……?」

「…………」


 応答のない朔耶は、わたしの肩で寝息を立て始めた。