それからいつものようにマネージャー業をこなしていく。 大変なのには変わりないけど、初日に比べるとだいぶやり方がわかって効率よく回せるようになってきた。


「さっきのボサボサ、貧乏臭くてよかったのになー」


 洗濯中、少し離れた所からそんな揶揄する声が聞こえて振り向くと、上級生がわたしを見てクスクス笑っていた。
 
 ……上級生たちは陰険だ。
 
 面と向かって悪口を言われたことはなく、こんな風に遠くから悪口を投げて面白がって、逃げていく。
 わたしを辞めさせたいのかな。 そんなに可愛い女マネがいいのだろうか。

 沸々とわきあがる感情を気にしない気にしない、とやりこめて作業に戻ると、コーチに声をかけられた。


「越谷。 体育倉庫にカラーコーンまだあるか見てきてくれないか」


 反射的に体が強張った。

 体育倉庫は、前にまりか先輩と白井部長がサボってた場所だ。


「どうした?」

「あっ、何でもないです! 行ってきます!」

「おう。悪いな」


 小走りで体育倉庫へと向かいながら、しばらく姿のないまりか先輩に思いを馳せる。

 まりか先輩、不特定多数の男子とって噂は本当なのかな。 優成もその中のひとりにしようとしてるのかな。

 言葉にできないイガイガとした感情が、胸に湧き上がってくる。

 ああ、なんて嫌な感情だろう。 自分の中にこんな汚い感情があるなんて思わなかった。