彼と目が合った瞬間、世界が変わった。

 世界が変わったなんて言うと、ある人は大袈裟だって笑うかもしれない。

 だけど決して大袈裟ではなく、本当に私の世界は変わってしまった。

 目に見えるもの全てが色鮮やかになって、それまで聞こえていたはずの色んな雑音が遠くなって、肌に感じる空気や鼻を掠める匂い、手の感触にいたるまで……

 わたしを取り巻く世界の全てが、一瞬にしてキラキラと輝き出したのだ。


 トンサニス王国の第二王女、エミリア・ド・ステヴナン、十五歳。

 まだ子供でいたかったわたしには、そのとき何が起こったのか分からなかった。