黒い王子と、甘い恋の嘘。




「嘘恋ゲームの、規約……っ?」



──一緒に帰る道中で、ちょっとだけ寄り道。

近所の公園にある、赤いブランコに座ってすぐ。



「嘘恋ゲームの規約決めよーぜ」



サラッとそう言われて、思わずおうむ返しにしてしまった。

いつの間に、“嘘恋ゲーム”なんて名前つけてたの……っ?

しかも、規約って、……必要、なのかな。



「そ、規約。ゲームなんだから、ルール必要だろ?」


ど、どうやら必要らしいっ……。

なんで黒崎先輩は、そんなにあっさりしてるんだろ……っ?



「相手を好きになったらゲームオーバー。これは必須じゃね?」



す、凄く楽しげに笑ってる……!

脅しに乗っちゃった私、やっぱりバカだっ……。


……そういえば。



「あのっ、黒崎先輩」

「ん、なに?」



凄く優しい表情を向けてくれる彼に、前のめりになって質問する。



「ゲーム相手って、なんで私なんですか……?
私なんかよりも黒崎先輩にお似合いの女の子、いっぱいいますよねっ……?」



期待を込めてそう言ってから、黒崎先輩の反応をうかがう。

ゲーム相手、私よりもいい人なんていっぱいいるんだし……!

私じゃなくてもいいはずっ。黒崎先輩はモテるんだから、彼女くらいすぐにできると思う!


……けど、その期待はあっさり打ち砕かれた。



「乃愛じゃなきゃダメ。他の奴とか、マジで無理」



……がーん……。

それは、あまりにもショックだ……っ。

だって、私が都合のいい女だと思われてるってことでしょ……?


思わず肩を落とすと、となり……っていうか斜め上から、鼻で笑われた。



「乃愛は信じらんねーくらいマイナス思考だな?」

「……だって、私が都合のいい女ってことじゃないですか……」



落ち込みながら、そう嘆く。


そうしたら。

黒崎先輩は私の前に立って、真剣な声で、一言告げた。



「違う」