黒い王子と、甘い恋の嘘。



「蓮くんが、元凶って……っ、そんなわけないよ! 蓮くんは優しいし……っ」


──そこで唐突に湧いてきた、不信感。


蓮くんも、瀬那ちゃんも……。

何か知ってるなら、どうして私にだけ教えてくれないんだろう……?




「乃愛だって、なんとなく気づいているんでしょう……?
あの子は人をだまして遊ぶのよ?
だから、乃愛もトラウマを抱えているの……!」



ずき、と。

強く、視界がくらむほどの頭痛に、床に手をつく。



──『なぁ乃愛、今度の日曜ここで遊ぼう!』



──『蓮くん、どうして日曜日に来なかったの……! わたしっ、ずっと待ってたんだよ!』




























『だまされる方が悪いんだよっ!!』




























「〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!」













声にならない悲鳴をあげて、目を見開く。


そこにいるのはママとわたしだけなのに、蓮くんのことを思い出したせいか……呼吸が上手くできなくなった。



必死に息を吐いて、呼吸を元に戻す。

ママが何か言ってる声も、聞き取れない。

私は近くにあった上着をつかんで、ママの家から飛び出した。