その日は、蓮くんじゃなくて理央くんと一緒に帰った。
理央くんはにこにこしながら、くだらない話を聞いてくれて、小学生の時と変わらず優しくて。
思わず、弱音を吐いてしまったんだ。
「私……蓮くんの隣にいていいのかな……」
「どうして?」
「……だって私、嘘恋ゲームの規約、すでに破ってるんだよ……っ?」
「……もし、そのことで蓮に咎められるのなら、」
理央くんの瞳が、私を捉える。
その真剣さに、思わず息を飲んだ。
「俺がいつだって守りに行くよ。乃愛は蓮のことを一番に思ってる。それで咎められたら、俺が蓮を叱っとくよ」
「……ふふっ。理央くんは優しいね。ありがとうっ」
「あ、ようやく笑った」
理央くんに言われて、初めて気づいた。
……私、今日一日、笑えてなかったのかも。
瀬那ちゃんに笑顔を見せたつもりだったけど、なんか変な顔をされちゃったし……。
「やっぱり、乃愛は笑顔が似合うよ」
サラッとほめてくれるし、優しい。
でも……、心の奥で『蓮くんがいい』って叫んでる私がいて、苦しくなるんだ。
……いっそのこと、理央くんを好きになれば楽なのかな、なんて考えて。
そんな自分が許せなくて、また苦しくなった。
「乃愛」
まるで私の心を見透かしたかのように、優しい声がかけられる。
「俺は乃愛の自然な笑顔が大好きだよ」
そっと、指を絡められて。
軽く抱き寄せられて、体がこわばるのと同時に。
「でもそれ以上に、乃愛自身が大好きなんだ」
──降ってきたその言葉に、全身が硬直してしまった。
