私が、特別──?



「それ、は、どういう……」



絞り出した声は、自分でも呆れてしまうくらい情けなく震えている。



「わかんなかった?
乃愛が特別。それ以上でもそれ以下でもねーよ」



──まるで、追及を拒むように告げられて、口をつぐんだ。


……でも、そっか。

きっと、蓮くんにとって……私は都合のいい存在。

他の女の子よりはマシ、ってだけの……。

その事実に、どうしようもなく胸が痛くなる。



「……わかり、ました。行きましょう、蓮くん!」



私は精一杯の笑顔をみせて、蓮くんの手を引いて歩き出した。


胸の痛みも、頭を殴られたような衝撃も、そっと隠して。

その気持ちの名前も、──もう、気づかないフリ。




──これは思い出作り。

相園さんとだって、九月までには別れるって約束したから。

蓮くんと、たくさん素敵な思い出を作ろう。

それで、七月の終業式に。



──私は嘘カノを、やめる。