黒い王子と、甘い恋の嘘。




「まあ! とってもお似合いですね〜!」


……本日五回目の、このセリフ。


ドレスなんて滅多に着る機会もないし、せっかくなら楽しもう!

……と意気込んだ私はどこへやら。

ドレスの試着って、緊張するし疲れる……っ。

五着目のドレスを着た私は、内心かなりぐったりしていた。



「乃愛様はどのドレスもお似合いですね〜! 黒も素敵です!」

「あ、ありがとうございます……っ?」



とりあえずお礼を言うけど、……なんだか背中がすーすーして落ち着かない。

背中が開いた黒のドレスは、大人っぽくて素敵ではあるけど、でもやっぱり恥ずかしい……っ。


顔を上げられず、うろうろと視線をさ迷わせていた、その時。



「っ、乃愛……?」



驚いたような声が聞こえてきて、反射的に顔を上げてしまう。



黒のタキシードとネクタイをつけている、いつもよりもさらにかっこいい彼が立っていた。



「蓮、くん……っ」

「……背中結構開いてんのか。かわいーけど……」



悩ましい表情をする蓮くんに、首を傾げる。

可愛いって、言ってくれたけど……ほんとはダメ、なのかな。



「……乃愛の色っぽい姿、他のヤツに見せたくねーの。だから、別のにしてくんね?」



ちょっと複雑そうな、でも困ったような顔で、私を見つめてくる蓮くん。

……それって、ヤキモチ……とか?

なんか、ちょっと嬉しい……っ。


私はこくこくと、首をタテに動かした。



「はいっ、別のにします」

「ん。……この水色のドレスは?」

「そちらは、これから乃愛様が試着されるドレスでございます。シンデレラをイメージした限定品です」

「じゃあこれ、着てみて。着れたら呼んで」



蓮くんにドレスを渡され、シャッ!と勢いよくカーテンを閉められる。


……って、シンデレラ……?

渡されたドレスを見れば、それは本当にシンデレラの魔法のドレスみたいだった。