黒い王子と、甘い恋の嘘。



「え……っ?」



まさかの言葉に、目を見開く。

なんで、どうして。

頭をぐるぐると悩ませていると、黒崎先輩は切なそうな瞳を私に向けた。



「……好きな相手、いるんじゃねーの?」

「へ……っ?」

「昨日は結局言えなかったけど。バイクで送ってもらってた人のこと、大好きって言ってただろ。……ちゃんと、恋してんじゃん」



バイク……って、ノドカくんのこと……?

ノドカくんのことは確かに大好きだけど、恋愛感情じゃないよ……!



「違いますっ……!」



大きな声で否定してから、慌てて説明を付け足す。



「ノドカくんのことは確かに大好きですけど、それは家族としてで……! ノドカくんは、私の義理の兄ですっ」

「……は?」



信じられない、といったように、彼は声を漏らす。



「ノドカくんには彼女さんだっていますし、恋愛対象ではないですっ。
私は、嘘恋ゲームを続けたいです……!」

「……………」



目を見開いて固まっていた黒崎先輩は、数秒してから。

私の肩を、自分の方に強く強く抱き寄せた。



「……良かった」

「へ……」

「乃愛……っ」



泣きそうな声。

少し震えた、私の肩を抱く手。


私はそっと、黒崎先輩の背中に腕を回した。



「大丈夫、私はここにいます。黒崎先輩」



──まだ、曖昧だけど。

富も名声もあるはずなのに、

どこか苦しそうで寂しそうな貴方を、


──幸せにしたいんです。黒崎先輩。


そのためにも、……ううん。

そのためだけじゃない、私の気持ちに素直になっても、


──貴方のそばにいたいです──