黒い王子と、甘い恋の嘘。




「黒崎先輩っ、あの……」

「ん? なーに」



バラ園のベンチに腰を下ろしてすぐ。

私はそーっと、手ぬぐいで包んだ大きい方のお弁当箱を差し出した。



「この前、購買のパン食べてたので……、良ければ食べてもらえませんか……っ」



緊張で手が震えそうになりながらも、おそるおそる反応をうかがうと。



「……手作り?」

「あ、はいっ! 手作りですっ」



もしかして、手作りは嫌だったかな……?



「す、すみません……っ、嫌だったら──っ」



嫌だったら、大丈夫です。

最後までは、言わせてもらえなかった。

お弁当箱をがしっと掴まれたから。


それに、黒崎先輩が、嬉しそうに笑ってたから。



「彼女の手作りとか、マジで嬉しい。さんきゅ」



その屈託のない笑顔に、一気に顔が熱くなった。


黒崎先輩のこんな笑顔、初めて見た……。

こんなふうに、笑うんだ。

なんだか心がほわほわあったかくて、幸せな気持ち。


思わずふにゃ〜っと頬をゆるめたら、黒崎先輩もまた嬉しそうに笑ってくれる。



「ほら、食べよ」

「はいっ」



いただきます、と丁寧に手を合わせる仕草。

男の子って、そういうの省いちゃうイメージだったけど……ちゃんとしてるんだ。

私が極端に苦手意識を持っていただけなのかな。

男の子も、結構いい人たちかもしれない。

そんなことを考えながら、卵焼きを口に運んだ黒崎先輩の反応をうかがうと。



「……! ん、うまっ」



美味しそうに食べてくれてる……!



「味、大丈夫そうですか……?」

「全然平気。てか、美味すぎていくらでも食えそう」



にこ、と無邪気に笑いかけられて、きゅっと心臓が締め付けられる感覚がした。


──嘘カノなのに、どうしてこんなに優しいんだろう……?



「乃愛、嘘恋ゲームのことだけどさ」



そう言われて、はっと思い出した。

ノドカくんにバレちゃったこと、言わなきゃ……!



「えっと、あの……っ」

「なあ。……この関係、やめたい?」