黒い王子と、甘い恋の嘘。



「女除け。俺の彼女、演じてろ」



意地悪く上がった口角。

……はい?



「俺とゲーム。どっちかが惚れたら終了な。
あんたは男嫌いを治せる、俺は女除けができる。
……いいだろ?」

「い、嫌ですっ!」



とっさにそう言葉が出た。

表だけだとしても、付き合うなら、好きな人とがいい。

それに、恋心を賭けたゲームなんて嫌だっ……。

強くそう思って断るけど、彼は余裕の表情で私を見下ろした。


「へえ、いいんだ?
そのままじゃ、この先ずーっと彼氏できねーよ?」



“ずっと”をわざわざ強調するのはひどいっ……!

黒崎先輩、すっごく意地悪だっ……。

って、あれ? ま、まさかっ……!



「さっきの話、聞いてたんですね?」



瀬那ちゃんが苦々しい顔で黒崎先輩を見る。



「ふっ、バレた?

乃愛ちゃんが俺の条件のまないなら、このことバラしちゃうよ?」



悪く笑う彼は、そんな脅し文句を軽く口にする。



「わ、わかりました……。
ゲーム、します……っ」


泣きそうになりながら、そう言うと。



「……っく、ははっ」



黒崎先輩は心底おかしそうに、面白そうに言ってのける。



「名字の通り、真っ白い子だな。
あんな脅し信じるなんて」



……な、なんだって……?



おそるおそる顔を上げれば、ばっちり目が合って。



「書くのと違って、言ったことは取り消せないもんな?」



絶望する私に。



「表では彼女として、裏ではゲーム相手として。
これからよろしくな? 乃愛」


黒い王子は、低く甘い声で囁いた──。