黒い王子と、甘い恋の嘘。




「……黒崎先輩、大丈夫かな……」

「黒崎って、高等部で人気の男の子?」



その日の夜。

お母さんとお父さんが出張だから、ノドカくんと二人で夕ご飯を食べていたら。

心の声はダダ漏れだったみたいで、ノドカくんが不思議そうに聞き返してきた。



「乃愛って、黒崎くんと接点あったの?」

「え、ぁ……っ」



どうしよう、口が滑っちゃった……!

おろおろと視線をさまよわせ、どう説明したらいいか困っていると。



「ふふ。その反応だと、恋人同士、ってとこかな?」



やわらかく笑ったノドカくんが、なんてことないように言ってのける。



「えっ!?」



頬が熱くて、手で触れる。

どうしよう。すごく、顔中が熱い……。




「聞こえちゃったんだよね。一条くんと黒崎くんが、勝負してるって」

「……へっ?」



黒崎先輩と、一条先輩……?


……一条先輩って、一条理央先輩のこと……?



──『黒崎先輩もだけど、一条先輩もいいよね!』

──『わかる!
黒崎先輩も一条先輩も王子様って感じ!』

──『なんてったって、黒崎グループと一条グループの御曹司だもんね!』



クラスメイトの女の子たちが話していたのを思い出して、納得する。

そういえば、一条先輩の方が一学年上で、二人はライバルって噂も聞いたなぁ。

ライバル同士、何かで勝負してるのかな。


のんきにそんなことを考えていると、ノドカくんが爆弾発言をした。



「乃愛も人気者だね。黒崎くんと一条くんに取り合いされて」



……とりあい?




「な、何言ってるのノドカくん……っ」

「え、だってそうでしょ?
黒崎くんと一条くん、乃愛を賭けて競ってるんだから」



さらっと、再びの爆弾投下。

頭が火事になって、回路がショートしてるよ……!!


じゃあ、黒崎先輩が思いつめた表情をしてたのは……そのせい、だったり?


……いやいやいやっ、そんなわけないよね……!

黒崎先輩が、私なんかのことで悩むわけないもんっ。



「ノドカくん、他に黒崎先輩の情報知らない……?」

「ええ、僕? 乃愛のほうがわかるでしょ、彼女なんだから」

「そんなことないよっ、付き合い始めたばっかりだし……!」

「はいはい。
んー……、あ」

ノドカくんは、何かを思い出したかのように声を上げた。



「黒崎くんが彼女を溺愛してるって噂聞いたよ」

「~~~~ッ!?」



声にならない悲鳴をあげて、耳をふさぐ。



「乃愛ー? なに、照れちゃったの?」

「恥ずかしいから、そういうことは言わないで……っ」



“溺愛してるフリ”なのはわかってるけど、それでも恥ずかしいっ……!

真っ赤になって、目をぎゅうっとつむっていたら。



「……でもさ、乃愛」


ノドカくんの呆れたような声が響く。



「──なーんで、彼女のフリなんて引き受けちゃうかな」



そう、彼女のフリ……って、ん……?



「乃愛が優しい子なのはわかるけど、さすがに……ね?」



ノドカくんのにっこり笑顔に、さーっと血の気が引いていく。



……どうしよう……!


──嘘カノだって、バレちゃった……!!