「ねぇ、あの子だよ。黒崎先輩の彼女」
「うわっ、信じらんない……」
「はあっ!? 先輩方っ!! どういうつもりですか!?」
「せ、瀬那ちゃん、私は大丈夫だからっ……!」
お昼休み。
本日かれこれ十回以上くり返しているやりとりを再び行い、だいぶ疲れてきた。
「何言ってんの乃愛、こんなの悪口だよ!?」
「わ、私は傷ついてないから、大丈夫だよっ」
逃げるように走り去った他学年の女子生徒を鬼の形相で見ていた瀬那ちゃんが、眉を下げる。
「乃愛ってほんと優しいよね。そんなんじゃ自分が潰れるよ?」
「だって、私は……黒崎先輩に釣り合うような容姿は持ってないもん。持ってたとしても、性格だっていいわけじゃない。言われた言葉は、ぜんぶ正しいよ?」
「乃愛……」
「瀬那ちゃん、そんな悲しそうな顔しないでっ……? 私は傷ついてないよ。大丈夫!」
にっこり笑ってみせると、彼女は泣きそうに顔を歪めた。
でも大きく息を吸い込み、吐き出し、明るい笑顔を作ってくれる。
「……よし! 私ももう大丈夫!
でも、苦しくなったら言ってね? あいつらなんて、私がぶっ飛ばしてやるんだから!」
「せ、瀬那ちゃんが言うと冗談に聞こえないよっ……!」
瀬那ちゃんはちっちゃい頃から空手を習ってるから、さっきの言葉くらい有言実行しちゃいそう……!
実際、瀬那ちゃんはそういうタイプだし……。大丈夫かなぁ……。
不安になりながらも、私は瀬那ちゃんに相談を持ちかけるべく、口を開いた。
「ねぇ、瀬那ちゃんっ」
「どうしたの? 乃愛」
優しく聞き返されて、私はぎゅっと両手を握り、真剣な目を瀬那ちゃんに向ける。
「彼女って、何をすればいいの?」
「……はあっ?」
瀬那ちゃんの呆れた声が、人気のない階段に響いた。
