それから、どのくらい気を失っていたのかは分からない。目を開けて飛び込んできたのは、見覚えのない天井。右腕には点滴の針が刺してある。
どうやら病院のベッドの上らしい。感情のない白い空間が、妙に心地良く感じた。
「桔平!起きた!?俺、分かる?」
横に座っていた翔流が、顔を覗き込んでくる。心なしか、目が潤んでいるように見えた。
「翔流か……なんか……久しぶりにすげぇ寝た気が……」
「お前っ……もぉー!」
横になったままのオレにガバッと抱きついて、翔流は鼻をすすっている。随分と大袈裟だ。
「玄関のチャイム押しても全然出てこないし!鍵開いてたから部屋入ったら倒れてるし!俺の方が心臓止まるかと思ったし!」
過呼吸は数ヶ月前から出てきた症状だ。普段は目を閉じて心を落ち着けていたら治まるが、この日はどんどん息苦しくなる一方で、ついに脳の血流が低下してしまったらしい。
おそらく翔流が救急車を呼んで、病院に運ばれてきたのだろう。迷惑をかけてしまったが、たまたま翔流と約束していて良かったと思った。
「楓姉ちゃんにも連絡つかないし、どうしようかと……良かった……生きてて……」
翔流と楓は、高校の頃に顔を合わせている。人懐こい翔流を楓が気に入って、たまに3人で食事をすることもあった。オレは電話に出ないしLINEの返事もしないので、翔流が楓の伝言係のようになっている。
「楓は……今イタリア行ってるんだったかな……」
「桔平の家族、他に知らないしさ。俺ひとりで心細かったんだぞ。お前が死ぬんじゃないかって……」
まるで翔流がオレの恋人のようだ。これだけ真剣に心配してくれるのは、家族以外だとこいつだけかもしれない。
オレみたいな人間のどこがいいのか、頼んでもいないのにいろいろと世話を焼いてくるが、今回はその有難味が身に染みた。
「死なねぇよ、過呼吸では」
「パッと見で過呼吸とか分かんないだろ!すげぇ苦しそうにしてるから慌てて救急車呼んじゃったよ!とりあえず脳とか胸には異常なかったみたいだけど、血液検査したら、お前栄養失調だってさ」
「あーだから点滴されてんのか……」
「他人事みたいに言うなよ。看護師さん呼ぶからな。点滴終わりそうだし」
目元を拭いながら、翔流が看護師の呼び出しボタンを押した。どうやら、もう夜になっているらしい。
看護師と医師が来て、軽く診察される。過呼吸と睡眠不足と栄養失調以外は特に悪いところがないようなので、医師の許可を得て帰宅した。
どうやら病院のベッドの上らしい。感情のない白い空間が、妙に心地良く感じた。
「桔平!起きた!?俺、分かる?」
横に座っていた翔流が、顔を覗き込んでくる。心なしか、目が潤んでいるように見えた。
「翔流か……なんか……久しぶりにすげぇ寝た気が……」
「お前っ……もぉー!」
横になったままのオレにガバッと抱きついて、翔流は鼻をすすっている。随分と大袈裟だ。
「玄関のチャイム押しても全然出てこないし!鍵開いてたから部屋入ったら倒れてるし!俺の方が心臓止まるかと思ったし!」
過呼吸は数ヶ月前から出てきた症状だ。普段は目を閉じて心を落ち着けていたら治まるが、この日はどんどん息苦しくなる一方で、ついに脳の血流が低下してしまったらしい。
おそらく翔流が救急車を呼んで、病院に運ばれてきたのだろう。迷惑をかけてしまったが、たまたま翔流と約束していて良かったと思った。
「楓姉ちゃんにも連絡つかないし、どうしようかと……良かった……生きてて……」
翔流と楓は、高校の頃に顔を合わせている。人懐こい翔流を楓が気に入って、たまに3人で食事をすることもあった。オレは電話に出ないしLINEの返事もしないので、翔流が楓の伝言係のようになっている。
「楓は……今イタリア行ってるんだったかな……」
「桔平の家族、他に知らないしさ。俺ひとりで心細かったんだぞ。お前が死ぬんじゃないかって……」
まるで翔流がオレの恋人のようだ。これだけ真剣に心配してくれるのは、家族以外だとこいつだけかもしれない。
オレみたいな人間のどこがいいのか、頼んでもいないのにいろいろと世話を焼いてくるが、今回はその有難味が身に染みた。
「死なねぇよ、過呼吸では」
「パッと見で過呼吸とか分かんないだろ!すげぇ苦しそうにしてるから慌てて救急車呼んじゃったよ!とりあえず脳とか胸には異常なかったみたいだけど、血液検査したら、お前栄養失調だってさ」
「あーだから点滴されてんのか……」
「他人事みたいに言うなよ。看護師さん呼ぶからな。点滴終わりそうだし」
目元を拭いながら、翔流が看護師の呼び出しボタンを押した。どうやら、もう夜になっているらしい。
看護師と医師が来て、軽く診察される。過呼吸と睡眠不足と栄養失調以外は特に悪いところがないようなので、医師の許可を得て帰宅した。



