絵を描くのって、本当に時間がかかることなんだなぁ。しかも卒業制作の絵は大きいから、いつも以上に構図を考えないといけないって言っていた。
 私も、もう少し絵のことを勉強しようかな。日本画なんてどうやって描くのか全然分からないし。ヨネちゃんにいろいろと訊いてみよう。

 でもその前に、お肉よ。今日の洋服は、ゆったりしてウエストが絞られていないワンピースをチョイスした。もう食べる気満々です。
 待ち合わせ時間の13時に恵比寿駅へ着くと、七海とヨネちゃんはすでに到着していた。
 
「愛茉ちゃーん、おひさぁー!うーん相変わらず天使だぞぉー」

 ヨネちゃんがキラキラの笑顔で手を振っている。LINEで頻繁にやり取りはしていたものの、会うのは2ヶ月ぶりくらいかな。
 さっそく3人で、駅近くの焼肉屋さんへと向かった。
 
「愛茉、全然焼けてないよねぇ」

 お店に到着して円卓に着席すると、七海が私の腕をまじまじと見つめてきた。自分で言うのも何だけど、確かに真っ白。

「浅尾っちと海とかプール行かなかったの?」
「行かない。私、海もプールも好きじゃないもん」
「あぁね。浅尾っちの肉体美は、自分だけのモノって感じ?」
「ち、違うしっ!」

 なんか汚い感じがするからだもん。不特定多数の人たちが、たくさん泳いでるのよ?想像しただけでゾッとしてしまう。
 
「きゃーえっちぃー」

 ヨネちゃんが言うとエッチに聞こえないのは、なんでなんだろう。

「ていうかぁー浅尾きゅんの腹筋割れてる説って、ホントなのぉ?」
「え?」
「去年、学祭の準備してた時にねぇー浅尾きゅんが自分のシャツで顔の汗拭いてる時に腹チラを見たぁ!って子がいてねぇー」
「うわ、めっちゃ見たかったそれ。浅尾っちの腹チラなんて、絶対色気の塊じゃん。むしろエロの権化じゃん」
「それでぇ、一瞬だったけど割れてる腹筋が見えたって言ってたらしいのよぉ」

 なんでそんなところで色気振りまいているのよ、桔平くん……。

 七海とヨネちゃんが、興味津々といった表情で私を見つめる。最近、分かってきたのよね。女の子の方がエッチな話が好きかもしれないって。私は相変わらず免疫がないけれど。だって恥ずかしいんだもん。

「で、やっぱり割れてるの?浅尾っちの腹筋」
「白状したまえー」

 丸テーブルだから、両側から2人の圧がかかってくる。答えないと、この話題から解放してもらえないんだろうな……。
 
「わ……割れてる……かなぁ~……」

 微妙な言い回しになってしまった。割れているんですけどね、しっかり。いわゆる細マッチョです。