小樽駅近くの市場は、東京では考えられないほど魚介や野菜が安い。
車で来ていることもあって買いすぎてしまいそうだが、この気候だと足が早くなりがちなので、愛茉はいろいろと吟味しながら買い物をしていた。
オレはただ、その後ろをついていくだけ。要は荷物持ちだ。食費については普段から愛茉に任せているので、何も口出しはしない。
「お嬢ちゃん可愛いから、オマケしちゃおう!」
「わーい!ありがとうございますー!したっけ、豚バラも買っちゃお」
可愛くて外面……もとい愛想がいい愛茉は、こういう場でもそれを遺憾なく発揮する。おかげで大量に肉をおまけしてもらったが、一体誰がそれだけ食べるんだよ。
「冷凍しておけばOKだもん。暑い季節は、やっぱりお肉でしょ」
「で、今日の夕飯は肉なわけ?」
「夏野菜ゴロゴロチキンカレーですっ」
「おー、いいね」
愛茉は市販のカレールーを使わずに、ターメリック、ガラムマサラ、コリアンダーといったスパイスを何種類も混ぜ合わせてカレーを作る。それをするようになったのは、オレと付き合い始めてから。市販のルーを使うより体にいいだろうと考えて、スパイスについて勉強したらしい。
最近は独学で学んでいる栄養学も取り入れて、料理のレパートリーが豊富になっている。それもすべて“健康で長生き大作戦”の一環だ。
おかげでオレも、以前は完全に無頓着だった自分の健康に少しは気を配るようになった。
実家を出てからは3食しっかり食べることなどまずなかったというのに、今では毎日ほぼ同じ時間に腹の虫が騒ぎ始める。そして太らないために、トレーニングをする時間も増えていた。
「あ、この袋重い」
その重い袋を、愛茉がオレの方へと突き出した。こっち持ってくれる?なんて、可愛くお願いすることはない。付き合い始めの頃はそういうところもあったが、かなり図々しくなった。それなのに今の方が可愛く見えるのは、何故なんだろうな。
それにしても、小樽ではやたらと周りの視線が突き刺さる。最初は愛茉が可愛すぎるからだと思っていたが、どうやら違うらしい。注目を集めているのは、オレの方だった。
考えてみれば当然か。こんな図体をして、自分を見ろと言わんばかりの派手で奇抜な服装をしている。東京でもチラチラと見られるぐらいだから、ここでは尚更だろう。
オレは別に目立ちたいわけではない。ただ好きな格好をしているだけだ。それを奇異の目で見られようが、何も気にならなかった。
「桔平くん、すっごく見られてたね」
帰りの車内で、愛茉が苦笑する。市場の人たちの視線には、愛茉も気がついていたらしい。まぁ、遠慮なくガン見されていたもんな。
車で来ていることもあって買いすぎてしまいそうだが、この気候だと足が早くなりがちなので、愛茉はいろいろと吟味しながら買い物をしていた。
オレはただ、その後ろをついていくだけ。要は荷物持ちだ。食費については普段から愛茉に任せているので、何も口出しはしない。
「お嬢ちゃん可愛いから、オマケしちゃおう!」
「わーい!ありがとうございますー!したっけ、豚バラも買っちゃお」
可愛くて外面……もとい愛想がいい愛茉は、こういう場でもそれを遺憾なく発揮する。おかげで大量に肉をおまけしてもらったが、一体誰がそれだけ食べるんだよ。
「冷凍しておけばOKだもん。暑い季節は、やっぱりお肉でしょ」
「で、今日の夕飯は肉なわけ?」
「夏野菜ゴロゴロチキンカレーですっ」
「おー、いいね」
愛茉は市販のカレールーを使わずに、ターメリック、ガラムマサラ、コリアンダーといったスパイスを何種類も混ぜ合わせてカレーを作る。それをするようになったのは、オレと付き合い始めてから。市販のルーを使うより体にいいだろうと考えて、スパイスについて勉強したらしい。
最近は独学で学んでいる栄養学も取り入れて、料理のレパートリーが豊富になっている。それもすべて“健康で長生き大作戦”の一環だ。
おかげでオレも、以前は完全に無頓着だった自分の健康に少しは気を配るようになった。
実家を出てからは3食しっかり食べることなどまずなかったというのに、今では毎日ほぼ同じ時間に腹の虫が騒ぎ始める。そして太らないために、トレーニングをする時間も増えていた。
「あ、この袋重い」
その重い袋を、愛茉がオレの方へと突き出した。こっち持ってくれる?なんて、可愛くお願いすることはない。付き合い始めの頃はそういうところもあったが、かなり図々しくなった。それなのに今の方が可愛く見えるのは、何故なんだろうな。
それにしても、小樽ではやたらと周りの視線が突き刺さる。最初は愛茉が可愛すぎるからだと思っていたが、どうやら違うらしい。注目を集めているのは、オレの方だった。
考えてみれば当然か。こんな図体をして、自分を見ろと言わんばかりの派手で奇抜な服装をしている。東京でもチラチラと見られるぐらいだから、ここでは尚更だろう。
オレは別に目立ちたいわけではない。ただ好きな格好をしているだけだ。それを奇異の目で見られようが、何も気にならなかった。
「桔平くん、すっごく見られてたね」
帰りの車内で、愛茉が苦笑する。市場の人たちの視線には、愛茉も気がついていたらしい。まぁ、遠慮なくガン見されていたもんな。



