「で、どうだった?浅尾さん」
「どうって、何が?」
「エッチしたんでしょ?やっぱり良かった?」
「しっ、してないよ!」

 ついつい大きな声が出てしまい、周りの目が一斉にこちらへと向く。
 七海は顔を寄せて、小声で話しはじめた。
 
「エッチしてないって、じゃあ何しに抜け出したの?」
「ラーメン食べて……それで終わり」
「えぇ~?浅尾さん、あんなにフェロモンがダダ漏れなのに、何もなしだったわけ?」

 フェロモン……まぁ確かに、浅尾さんってやたらと色気があるもんね……。

「何もないよ、ラーメン屋に誘われただけで」
「ふ~ん。案外、愛茉に本気なのかな?遊びならすぐ誘って、すぐヤッちゃえばいいわけだし」
「浅尾さんって、遊んでそうに見える?」
「だって、あの見た目にあの色気はやばいでしょ。絶対、いろんな女を知ってるって」

 七海は高校時代にかなり派手に遊んでいたらしくて、ある意味で男を見る目が肥えている。
 男性経験が一切なくて、漫画や雑誌とかの知識しかない私とは違う。やっぱり“リアル”を知っているんだなぁって思うことが、よくあった。

「浅尾さんってさ、合コン来てるのに、女に対する必死さがまったくなかったじゃん?何となく一歩引いた目で周りを見てたっていうか。だから遊び相手探してるだけなのかなぁって思ってさ」

 それは、私も少し思っていた。だから他の3人とは異質な感じがしたというか。服装が独特だからってだけじゃなく……。

「結衣と葵も、浅尾さんのことは気に入ってたみたいだけどさ」

 合コンに参加した、七海の友達。2人とも高校の時は何人かと付き合っていたみたいだし、私より男性経験があるのは間違いない。

「でも、彼氏にしたいタイプではないって言ってたよ。なんていうの、危ない魅力って感じ?私もそう思ったしさ。でも見た目いいしエッチが上手そうだから、思い出づくりで1回だけとかセフレなら全然アリだけど。むしろ、こっちからお願いしたいぐらい」

 こういう明け透けなところは、ある意味で尊敬する。
 遊びでエッチするなんて、そんなの私には無理。好きでもない人に触られるなんて、気持ち悪すぎるんだけど。
 
「浅尾さん、意外と誠実で優しい感じはしたけどな……」
「ヤリモクの男って、最初はめちゃくちゃ優しいからね。ただ、ヤッたあとは急に冷たくなるよ」

 いきなり処女に手を出すほど、鬼畜ではない。
 浅尾さんはそう言ったけれど、もし私が処女じゃなければ手を出す、つまり遊んでたってことなのかな。