————性が、ない……?

 俺は彼女の言葉を、頭の中で反芻させる。

 一体、どういうことだ。

 考えても、その言葉の意味がわからない。

 男でも女でもない、そんなことがあるものか。

「もちろん、生まれた時から性が決まっている人もいますわ。でも、アトランティス民の三割は無性で生まれてきます。そして……生涯を添い遂げたいと思った人に出会った時、その相手の性に合わせて性を定めるんです」

 混乱する俺に、彼女はそう説明した。

 その説明を聞き、ますます俺の頭は混迷を極める。

 民の三割が無性で生まれる……って、どんな……しかも、後から自分で性を決められるってことか?

 あり得ない。

「あの、カオル様の国には、そういう方はいらっしゃらないんですか?」

 彼女が、不思議そうにそう聞いた。

 初めて聞きました、と答えると、ひどく驚いた顔をする。

 どうやら、ここでは普通のことなようだ。

 ……驚いたのは、こっちだ。

 頭を抱え、ベッドの白いシーツを見つめた。