悪魔と涙と甘い恋。


「ごめんなさい……」

「どーしたの?」


この話はついこの間、神楽さんとしたばかり。

楽しそうに提案する衣吹さんの話を断るのは、すごく辛いけど……。


「あたし、お金が無いんです……」


だから……一緒に行けない。


「私出すよ?」

「それはダメ……!」

「じゃあ羽瑠ちゃんの分のお小遣い貰って来───……」

「ダメダメッ……!」


走り出そうとした衣吹さんの腕を両手で掴んだ。


「それはここの、桜夜組のお金だから……あたしは使えない……」


この家に住むこと自体が“甘え”なのに、お小遣いをもらって欲しいものを買ってって……そんなの贅沢すぎる。


「う〜ん」と、衣吹さんが唸った後、近づいて来る足音が聞こえて。

顔を上げると睦美さんがいた。



「お母さん!」

「ごめんね、聞こえちゃった」


両手をパチンと合わせ、申し訳なさそうに眉毛まで下げて謝る睦美さん。