せっかく心を開いてくれそうだったのに、こいつのせいで台無しだ。
「別に羽瑠のせいじゃねぇから。刺したのは自分の意志」
そう言葉にしても羽瑠の震えは止まる事が無く、そのまま俯いた。
あーあ。
目が合わなくなった。
持っている盆を後藤に押し付け、俺は羽瑠が持っていたコップを取る。
「羽瑠は何も悪くねぇよ。気にすんな」
こんなに震えてんじゃ、多分、今日はもうこの部屋から出ねぇな。
「……」
今羽瑠に触れる事は許されねえ。
震える羽瑠の頭を撫でる事ですら……。
「晩飯の時にまた来る」
羽瑠に背を向け、静かに襖を閉めた。