たぶん羽瑠はそれに気付いていない。
心もヒートも不安定で、感じなかったんだろう。
“それ”は出会った時に感じるものだと言うから。
「お嬢と違い、羽瑠のフェロモンは俺にとってかなりキツいです」
照れた時。嬉しかった時。
感情が溢れた時に、羽瑠は決まって匂いを強くさせる。
もう……気付かないフリは無理なんだ。
俺の中に潜む本能が出て来てしまう。
……いや、出て来てしまった。
「いつか、理性が負け、取り返しのつかない事が起こる前に……羽瑠から距離を取りたいんです」
「……」
「……」
「どうにも出来ないのか……?」
「……すみません」
「番になる選択肢は……?」
「………申し訳ありません」
そんな選択肢は初めから存在していない。
これは俺に対してのけじめ。
俺は桜夜組の若頭で組長の右腕。
第二の性に惑わされるわけにはいかねぇんだ。


