何もかも信じたくなかった。
悪い夢なら覚めればいいのにって。
なのに、あたしの頬を掴む力が。
見下すようなその視線が。
全部……真実だと言っている。
「世間は“Ωのフェロモンにやられたα”って言うだろうね?“仕方ない”って言って誰もアンタの心配なんかしない」
グッと唇を噛んだ。
だけどダメだった。
一粒の涙が頬を伝って落ちる。
「へぇ。綺麗に泣くんだね」
「離してっ……」
この期に及んでまだ佑輝くんのことを信じようとしてる。
嘘じゃないかって。
驚かせようとしてるだけじゃないかって。
「やめてっ、佑輝くん……!」
ううん。違う。
あたしがただそう思いたかっただけなんだ。
全部嘘だよ。お姉ちゃんごめんね。
って、いつもみたいに笑ってほしかっただけなの。


