悪魔と涙と甘い恋。


前を見ると横断歩道の信号が点滅して、横を見れば車が当たり前のように走ってる。


何も変わらない風景に、さっきの声は幻聴だったんじゃないかと疑うほど。


それくらい静かな場所だった。



……何だったんだろう?


警戒しつつも数メートル歩いたところで、視界に飛び込んできたものに心臓が嫌な音を立てた。



路地裏の死角に入る場所。


そこで女の人を取り囲むように、複数人の男の人がいた。



さっきの声は、たぶんここから……。



「そこ押さえてろ」

「や、やめて!」

「こんなに甘い匂いさせて誘ってんのはアンタだろ?」



“Ωが襲われてる”って、すぐにわかった。



ドクドクと息苦しくなる鼓動にまるで血液が逆流してるみたい。



「やめて!」

「おい、この女の口を塞げ」


口を塞ぐ為に誰かが動いた反動で、女の人の顔が見えた瞬間、ヒュッと息が出来なくなった。